2016年12月28日(水)は、先日八戸パークホテルで行われたイノベーションベンチャーアイデアコンテストへの工学系大学生の参加による教育効果について比較してみました。この内容は後々大学の紀要にまとめようと思っているのですが、今年度の紀要の募集は締め切られているので、来年度の投稿の為にメモ的に残しておこうと思います(まだ今年度の紀要も全然出来ていないのに、こんな事している暇あるのだろうか・・・)。
すなわち今回は、学生がこの様なコンテストに参加する教育的な効果について、アクティブラーニング(AL)、プロジェクトベースド・ラーニング(PBL)、オンザジョブ・トレーニング(OJT)といった観点から整理してみます。
学生によるコンテスト参加のメリットとしては
- 役に立つものを開発するという目的意識がはっきりしている。
- 高度な開発計画を比較的短期間に設定できる。
- 新しいイノベーションを起こす為には、マニュアルにとらわれずアイデアが重要であることを学べる。
- ものづくりの最終形態までを実践できる。
- 良いものを創っても、宣伝やプレゼンテーションが重要であることが理解出来る。
- 学外のアカデミック以外の有識者からの評価が得られる。
- 学外の活動に関わることにより、イベントには学外の様々な人が関わっていることを知ることが出来る。
- 最先端分野を学ぶことが出来る。
- 不本意な結果となった場合の自身や周囲の現状・環境や条件の分析や今後へのフィードバックが出来る。
などが考えられ、また
10. 結果に対する政治的な背景や大人の事情が体験できる
などという思わぬ収穫もあります。一方、デメリットとして
11. 大人数の学生への対応に工夫が必要
12. 趣旨に賛同できない学生にとって大きな負担
などが考えられます。そこで、これらをたとえば大学内で一般的に行われているアクティブラーニングである、卒業研究、実験、創造的な実験と比較してみると、表1に示すようにアイデアコンテストへの参加の効果は卒業研究と類似していることが分かります。
表 1 アイデアコンテストの教育効果の他のPBLとの比較
項目 | アイデア
コンテスト |
卒業研究 | 実験講義 | 創造的な実験講義 |
1 役に立つものの目的意識 | ◎ | ○ | △ | ○ |
2. 高度な開発計画の短期設定 | ◎ | ○ | × | × |
3. イノベーションとアイデア | ◎ | ◎ | × | △ |
4.物づくり最終形態までの実践 | ◎ | ○ | × | ○ |
5. 宣伝やプレゼンの重要性 | ◎ | ○ | × | ○ |
6.アカデミック以外からの評価 | ◎ | ○ | × | × |
7. 学外の人との関わり | ◎ | ○ | × | × |
8.最先端分野の学び | ◎ | ◎ | △ | △ |
9.大人数学生への対応 | △ | △ | ○ | ○ |
10. 学生の負担 | △ | △ | ○ | ○ |
そのことから近年、学会等の主催で実施されている研究展示コンテスト(受賞の審査を伴う国際会議でのポスター展示もこの種に含まれる)や、クリアすべき明確な技術用件を定めた形での物づくりコンテストに参加することも、大きな教育効果があると考えます。
今後も日本が経済的な発展や国民所得の維持しつつ、技術立国であり続けるためには、工学分野の人材教育が必要なことは誰も否定しないことだと思います。その中で、たとえばアップルのスティーブ・ジョブス氏やマイクロソフトのビル・ゲイツ氏、日本ではソニーの盛田昭夫氏、本田技研工業の本田宗一郎氏、鈴木自動車の鈴木修氏、ヤマハの創業者である山葉寅楠氏や元・日亜化学の中村修二氏のようなアメリカ型イノベーションを起こせる人材の育成の為には、今回のイノベーションアイデアコンテストのような、新しいアイデアを具現化して創造・プレゼンテーションするようなカリキュラムの正課への組み込みが重要であると考えます。
静岡県の浜松など西部地方には「やらまいか精神」という独特な起業風土があり、たとえば今でも静岡大学助教授に時にテレビを開発した高柳健次郎氏の卒研生が起業した浜松フォトニクスなど、研究開発型の先端技術企業が頑張っています。このことから、日本のベンチャーやものづくりは、まだこれからも延びる可能性を秘めていると信じたいです。
最近はベンチャーや起業について、中国の深センから学ぶ事が多くなってしまいましたが、HIT Teamたねちゃんとしては今後も、イノベーションを起こせる人材の輩出を意識して活動を続けていきたいと思います。