携帯電話の父と呼ばれている奥村善久先生の話を聴講しました

2016年1月12日(水)は八戸工業大学工学部電気電子システム学科の講義室で情報通信法規という授業にてNTT docomoの奥村幸彦先生の講義を聴講しました。もちろんHIT Teamたねちゃんメンバーも複数の人がこの講義を受講しています。 その講義の最後に、日本が誇る携帯電話の父と呼ばれている奥村善久先生の話を聞くことが出来ました。ちなみに、この講義の講師の奥村幸彦先生は奥村善久先生とは直接の親類ではありませんが、善久先生が受賞時にNTTグループとして関係省庁および報道機関と対応する必要があり、善久先生の秘書的な役割で様々なお仕事に当たられたそうです。

皆さんは携帯電話サービスは、どの国が世界で最初に商用化されたかご存知でしょうか?正解はなんと日本なんです。1979年12月3日、世界初の準マイクロ波(UHF)帯セルラー方式による商用自動車電話サービスを東京23区で開始しました。

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この事業に多大な貢献をしたとして、金沢工業大学名誉教授で電電公社OBの奥村善久先生が工学界のノーベル賞とも言われているチャールズ・スターク・ドレイパー賞を2013年に受賞されました。受賞理由は、自動車・携帯電話ネットワーク・システムおよび標準規格に対する先駆的貢献です。

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とても名誉なことなので、NTT docomoからもプレスリリースがされています。

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2013年2月19日のNAE表彰メダル授与の様子です。

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授与されたメダルと表彰状です。同時受賞者は、北欧・ノルウェーの研究者Thomas Haugさん、AT&Tの研究者のJoel Engelさん、Richard Frenkielさん、世界で始めて携帯電話でAT&Tのライバルと電話した元Motorola(モトローラ)社員のマーティン・クーパー(Martin Cooper)さんという、そうそうたる顔ぶれです。

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奥村先生の具体的な受賞理由として 1.VHF・UHF帯移動無線での電波伝搬特性の解明と奥村カーブの確立 2.大容量・広域自動車電話方式の構想および実用化計画の策定 があげられます。

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1962~1965年当時は電卓も無かった時代ですから、真空管製の測定器を三菱のバスに積み込み、ペンレコーダで受信電界強度を記録しつつ、都市部の電波伝搬特性を記録していたそうです。そしてこれらの測定結果を都市の形状等で分類して図にまとめたものが、無線通信関係者にはとても有名な奥村カーブです。奥村カーブは都市部では自由空間伝搬損失がそのまま適用できず、建物による遮断や散乱の影響で、受信電界強度が下がることを示しており、この図は現在でも、携帯電話サービスを構築時のシステム設計のよりどころとされています。

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さらに、当時の電電公社の無線通信技術といえば、YRP野比駅にある横須賀通研(今はNTT未来ねっと研究所でしょうか?)が総本山みたいなイメージがありますが、奥村先生は武蔵野通研の移動無線研究室長として、大容量・広域自動車電話システムの研究実用化を牽引されました。また、昭和46年6月にAT&Tベル研究所に訪問し、セルラー方式の研究についてベル研メンバーと議論をしたそうです。そのメンバーに今回の受賞者2人が含まれています。

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その後、電電公社・電気通信研究所における8年の研究開発を経て、セルラー方式が1979年に東京で世界で始めて実用化されました。現在検討されている第5世代(5G)の携帯電話システムも、この奥村先生たちの成果である第1世代(1G)の技術を引き継いでいるとも言えます。

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写真は総務大臣からの表彰で、協同研究者の岡山大学教授・秦 正治先生です。

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秦 正治教授の功績は、こちらに詳しく書かれています。そんな奥村善久先生が、なんと2016年1月13日(水)19:00からのテレビに出演するそうです。日本テレビの「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」の新コーナー「ノーベル賞じゃないけどノーベル賞くらいスゴい賞を取った日本人の旅」です。

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ちなみに、八戸工大の柴田幸司先生は、金沢工業大学の学部4年生の時に奥村善久先生の研究室に配属され、卒業研究として移動体通信における電波伝搬の研究の指導を受け、当時は測定車で金沢市内を走り回りながら、NTT移動体無線網・金沢西念基地局から発射される800MHz帯の電波における市街地の受信電界強度を奥村カーブとフィッティングさせていました。その時に、当時就職部長でもあった善久先生の紹介で、Z研究が行われていた静岡県島田市の生まれだったこともあり、主にマイクロ波帯の無線通信システムやその構成部品の開発を行っている島田理化工業という会社を推薦していただき、1993年に島田理化に入社して上司から電磁波工学やアンテナ、マイクロ波技術を学びつつ、19GHz帯高速無線LANシステム(VJ25 System)や携帯電話基地局や衛星搭載用コンポーネントの開発などに携わりました。そして、退社後の現在も無線通信やミリ波レーダーに関する研究を続けているそうです。講義とは直接関係ありませんが、下記は柴田先生が2013年11月29日(金)のマイクロウェーブ展MWE2013という展示会で展示委員会委員という仕事の合間の奥村先生の講演時に20年ぶりに再会し、一緒に撮っていただいたツーショット写真だそうです。

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これも何かの縁を感じますね。 これを期に、よりいっそう世の中のためになることをしていかなければと誓う、HIT Teamたねちゃんメンバーなのでした。